979780 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

Selfishly

Selfishly

完結p2「狩人と哀れな獲物 2」



忘却の行方 第2ステージ

 ~ 狩人と哀れな獲物 2~



待っていた電話は思いの他早くにかかってきた。
ロイはサインの手を止めて、鳴り響く音を止める為に
受話器を上げる。
「はい。私だが」
特別回線なので、名乗る必要も無い。かけてくる人間は限られているのだ。
『中将っすか!』
「ああ、ハボックか。どうした?」
『駄目っす! 俺らじゃ止めれません!』
悲痛な訴えに、ロイは小さく哂うと。
「鋼のか?」
『そうっすよぉ。着くなりガバガバと飲み始めて・・・。
 幾ら酒に強いっても、無茶過ぎるんで控えるように言うんですが、
 大将、やけに荒れてて飲むの止めないんですよ。
 あれじゃ、身体壊します』
「そうか・・・。

 判った迎えに行くから場所を」
『頼んます! 場所はーーー』

場所を聞き、帰り支度を素早く終わらせて、最後に机の上に用意されていた書類を1枚、
デスクの決済済みのBOXに入れて、部屋を出て行った。

決済済みの書類の1番上に置かれた書類は。
『有給申請書』
ご丁寧に、エドワードのサインとロイの許可印がきっちりと押されていた。


「大将ぉ、もう止めとけって!」
「そうだぞ、エド。お前、もうベロベロだろうが」

「うっさ・・い! 何だよ・・・、飲んで憂さ晴らししろって
 言ったのは、あんた達だろぉ」
がっちりと握った酒瓶に直接口を付けて呷り始めたエドワードを
皆が必死に押さえ込もうとしている。
が、酔っ払いの行動を止めるのは、なかなか思うようにはいかない。
皆がうろたえ、強硬手段に出るかと思いを定め始めた時に。
「鋼の、いい加減にしろ。
 そら、帰るぞ」
そう背後からかけられた声に、その場で手を焼かされていた面々は
ほっと安堵の吐息を吐き出す。
「中将ぉ~、助かりましたぁ」
ハボック達の上げる情けない声に苦笑を作り、ゆっくりと半場崩れかけている
エドワードの傍に寄る。
そして俯かせてる視線を自分に向けるように、ロイはエドワードの肩に手をおいて
少しだけ引寄せる。
焦点の定まらない視線がロイを認めた瞬間、エドワードの瞳の中に
縋るような色が濃くなる。
「ほら、エドワード。 もう帰ろう」
視線を合わせる為に屈みながら、そう話しかけてやる。
「・・・中将・・・。 中将ぅ・・・」
「ああ、判っている。大丈夫だ、私が来たからな」
自分を呼ぶ声に答える様に告げ、あやすように背に手を回してやる。
「・・・ん」
それに返すように小さく頷き、エドワードがふらつく身体で手を伸ばしてくるのを、
ロイはしっかりと身体ごと受け止めてやる。
「中将・・・中将・・・、俺・・、俺は」
何かを告げようと呟いているエドワードに、ロイは抱きとめた背を軽く撫ぜて宥めてやる。
「ああ、判ってる。私がちゃんと聞いてやる。
 だから、もう帰ろう」
そう言ってやると、エドワードは安心したようにロイの腕に納まり、
「うん」と小さく返事を返した後は、急速に眠りに堕ちていった。

そんな2人の光景を見守っていたメンバーは、声も出せずにいた。
ロイはしっかりとエドワードを抱き上げると、クルリと踵を返して
メンバー達の方を向いてきた。
「皆、彼の事は気にせず、仕切りなおして飲んでくれ。
 ここの支払いは私がしておくから、楽しんでいってくれたまえ」
そう微笑んで告げると、ロイはエドワードを抱きかかえたまま
優雅に歩き出して帰って行った。

「・・・う~ん、何だかなぁ・・・」
「ああ・・・」
 
ハボックとブレダが、顔を見合わせて首を捻っている傍で、
フュリーは暢気にも場違いな感想を告げてくる。
「素敵ですよね~。まるで映画のワンシーンみたいでした」

「お前なぁ・・・」
はぁ~と大きなため息を一つ付いて、次の言葉を続ける。
「・・・それって、恋愛映画だろ?」
「ええ、勿論!」
明るい肯定の返事に、聞いた者は表情を暗くした。




「もう大丈夫かね?」
浴室から連れ出したエドワードにバスローブを着せてやり、
髪を拭いてやりと、甲斐甲斐しく面倒を見てやりながら
ロイが訊ねてみる。
「・・・ん。
 もう・・・大分いい」
ぐったりとソファに凭れかかって、エドワードがそう返してくる。
「ほら、レモン水だ。
 気分がすっきりするぞ」
「・・・サンキュ・・」


無茶な飲み方をすれば、その後は当然の結果がやってくる。
幾ら酒に強かろうが、アルコールだけを流し込んでいけば
身体が拒否反応を起こしても当然だ。
エドワードにも悲惨な目がやってきて、ロイの家に着いてトイレに駆け込んでから
先ほどまで、延々と吐きつづける羽目になっていた。
吐くだけ吐いてしまえば、アルコールも幾分薄まったのか、
少しずつ意識もはっきりとし始めたようだった。
汚れてしまったエドワードを、ロイは慎重に風呂に入れてやり、
今に至ると言うわけだった。


エドワードの髪を拭き終わり、ロイはさりげなく横に座る。
「気分は悪くないか?」
ソファーに凭れ、目を瞑ったまま仰向いているエドワードが
そのままの状態で返事を返してくる。
「ああ・・・、もう吐くモンも残ってないからな」
自嘲的な哂いを表情にも声にも濃くして、そう答えて、深く嘆息を付いている。
「そうか、ならいい」
それだけ言って、黙っているロイの様子に、漸くエドワードが目を開いて
ロイの方に視線を向けてくる。
「・・・聞かないのかよ?」
これだけの醜態を曝して、迷惑をかけたのだ。
かけられたロイには、理由を問い詰める権利があるだろう。
エドワードの問いに、ロイはカップを口にあてゆっくりと飲み出す。
「勿論、聞きたいとは思うよ。
 自制の厳しい君が、ここまで乱れたのは珍しいからね。
 が・・・、君が話したくない事を、無理に聞き出そうとは思わないさ」
そのロイの返答に、エドワードは先ほどとは違う意味での吐息を吐く。
「あんたには、やっぱ敵わないよ」
「何だ?対抗でもしたかったのか」
空気を和らげるように、軽い言葉で返してやると、
エドワードも小さく微笑む。
「んー、別に対抗しようとかは思わない・・な。
 追いつければ良いとは思ってるけど、俺みたいな未熟な若造じゃ、
 まだまだあんたには近づけないって事が、身に染みて判ったからな」
「・・・君は若いが、未熟ではないさ」
ロイのその言葉に、照れたように小さく「サンキュー」と返ってくる。
そしてそのまま無言でカップの中身を飲み干していく。
空になったカップをテーブルに置くと、エドワードは両手を後ろ手で組んで頭を乗せ、
ソファーにまた凭れて天井を仰ぎ見る。
そして、訥々と語り出した。

「昨日の夜さ・・・、彼女から婚約を破棄してくれって言われたんだ。
 

 そのちょっと前から、何か様子がおかしいなぁとは思っていたんだけどさ、
 まさかそんな事を言われるとは思ってなくて、正直驚いた。
 で、やっぱり気になるだろ?
 で、何故なんだって聞いてみたらさ。
 ・・・子供が出来たから・・・そう言うんだ」

「子供が? なら余計に結婚を早めた方が良いんじゃないのか、普通」
ロイは出来るだけ平静を装って、そう答えてやる。
「・・・俺の子供じゃないから」
「君の子供じゃない?」
「ん・・・俺らって、そのぉ・・・そういう事はまだ、一度もしてなくてさ。
 だから、そう告げられたときも、思わず茫然として言葉も出なくて・・・。
 で聞いていくうちに、相手が彼女の幼馴染の男で。
 俺も何度か会った事もあるんだ」
「何だ、それは! じゃあ彼女は、婚約者がいる身で浮気をしたと言うわけか!」
エドワードの話を聞いて、腹立ちが抑えられないという風にロイが声を上げる。
「まぁ結果的にはそうなるんだけど・・・。
 でも、そうなった経緯の理由が、俺にもあって・・・」
「君に?」
「ん・・・。
 彼女が言ったんだ。俺が彼女を本当に好きじゃないんだ。愛してないんだと。
 好きなら、愛しているなら、抱きたいと思うのが普通でしょってさ。
 
 やっぱ、そうなのかな? 
 あんたも、そう思うか?」
縋るように自分を見つめてくるエドワードに、ロイは慎重に返していく。
「そう・・・だな、多分私も、その彼女と同じだろうな」
「やっぱり・・・。
 やっぱ、俺が変なのかな・・・」

ロイは慎重に、慎重に最後の詰めを始める。
エドワードの性格を考えれば、彼が人に非を求めるような人間ではない。
だから、必ず彼の思考は自分を省みるところへと行き着くだろうと。
「変ではないだろう?
 君は彼女の事を思って、自制していたのだろ?
 律儀な君だ。けじめを守ろうとしての事なら、君に非があるとは思えないが?」
そのロイの援護の言葉も、エドワードは疲れた様に頭を振って返す。
「違う・・・違うんだ。
 俺・・・俺は・・・」
口篭ってしまったエドワードを促すようにロイが尋ねる。
「何が違うんだい、君は?」

重い沈黙が一瞬空間を横切っていく。

「俺は・・・抱けなかった。
 抱きたいとは・・・思わなかったんだよ!」
「・・・・・・・・・・何故?」
「な、何度かせがまれて、そんな雰囲気になったりもした。
 けど・・、抱きしめて柔らかい身体を感じると、もう駄目なんだ。
 か、母さんの事が頭に過ぎって、体が・・・心も冷えちまったみたいに凍えるんだ」
「エドワード・・・」
名を呼んでやりながら、彼の肩を勇気付けるように腕を回して抱いてやる。

ーーー さすがのロイも、エドワードの心情までは全て見通せていたわけではない。
 が、もしかしたら・・・とは思ってはいた。
 ずっと一緒に生きていれば、相手の色々な部分も垣間見えてくる。
 エドワードはこの年頃にしては、潔癖すぎるのだ。
 もてないなら兎も角、彼は人気もあり引く手数多で来た。
 しかも、婚約者まで出来たとなれば、もう少し性への要求も
 強くなってもおかしくないだろうに。
 
 多分、エドワードは女性を神聖視し過ぎているのだ。
 もし勇気を出して、1度でも抱いてしまえば、
 エドワードが持ち続けている綺麗な幻想も崩れ去っていた事だろうが。
 
 が、じゃあ彼が同性に惹かれるのか?と言えば、そう単純なものでもない。
 彼はただ性的な事柄に臆病になっているだけなのだ。
 だから、1つの壁を乗り越してしまえば、ごく普通の日常として
 受け止めていけるようになっただろう。
 ロイの厳しい監視下の中では、そんなエドワードを唆す者も居らず、
 身も心も清いままで育ってしまったと言うわけだ。
 そう・・・ロイが手垢をつけるまでは。

 が、彼の誤解や悩みを解いてやる気はさらさらない。
 そう、彼にはそのままそう思い続けて貰っていなくては ーーー

「では君は、女性には反応しないと?」
「多分・・・よく判んないけど」
「でも自分ではする事もあるんだろ?」
「まぁ・・・そりゃあ、たまには」
そう返した後、ロイが黙り込んでしまうと、その沈黙に耐え切れ無くなった頃、
エドワードがロイに窺ってくる。
「なぁ・・・、やっぱ俺って変なのかな?」
「そうだな・・・一概にはそう決め付けるものではないさ。
 
 で、彼女の事はどうなったんだい?」
その問いに、「ああ」と思い出したようにエドワードが結末を話す。
「で、彼女にしてみれば、自分を愛してくれて、しかも子供まで出来た相手だろ?
 2人で所帯を持って、生きて生きたいってさ。

 まぁ、それは当然だろうから、俺からは何も言えないさ」
「偉くあっさりと言うな。
 君はそれで本当に構わないのかい?」
「ん・・・・。
 正直、裏切られたと思ったときには腹も立った。
 けど・・・逆にホッとしたのも本音なんだ」
「ホッとした?」
「ああ。
 これで彼女の要求に答えなくちゃって思う必要がなくなっただろ?
 そうしたら、気持ち的に軽くもなったしさ。

 俺って、酷い奴だよな・・・」
「そんな事は無いさ。
 彼女の為に、身を引いてやる事が出来るのは、君の優しさだ」
「ん・・・サンキュー。
 そうあんたが言ってくれると、何だか俺も落ち着くよ」
自分の方に体重をかけ凭れてきたエドワードを、ロイは肩を叩いて落ち着けてやる。
「君なら・・・そう急がなくとも、この先にも良い女性と巡り会えるさ」
と、そんな心にもないセリフを情感タップリに言ってやる。
思ってもいないことを、さも心を籠めて言う事など慣れている。
「ん・・・、でももういいや、俺。
 今回の事で懲りたって気になったし。
 どうせ、相手が誰でも同じ結果になるような気がするしな」
そんな自分を思い悩みもしたが、こうして告白して聞いて貰えば、
気持ちも落ち着いた。
結局自分には、家族を持つなど分不相応だったのだ。
家族を持つ事は、幼い頃の自分の憧れで、
今は違う夢を追っている。
無理して、過去の夢を抱き続ける必要などないのだから。

「エドワード・・・。
 そう達観することもないんじゃないのかい?
 別にまだ、駄目だと決まったわけでもない。
 試したわけではないんだろ、他で?」
そのロイの言葉に、驚いたように目を見開いて見てくる。
そうやってエドワードが顔を上げれば、元々寄り添っていたのだから、
驚くほど顔が近くなる。
それに気づいたエドワードが、少し距離を空けようと動くのを
ロイは肩に回していた腕に力を入れて引き止める。
そして・・・。
「試してみようか?」
と唇が触れ合う程の間近で囁く。
「た、試す?」
ロイの醸し出す空気に気圧されたように、エドワードが戸惑いを濃くする。
「ああ、試すんだよ。
 君が本当に、反応が出来ない人間か、そうでないかをね」
「ど、どうやって?」
ロイの誘惑の言葉に、怯えと興味が代わる代わるエドワードの表情を揺らしている。
「君と・・・私でだ」
それだけ告げると、返事を言わせないまま唇を触れ合わす。
驚いたように跳ねる身体を、しっかりと抱きしめると、
快感に火をつけるような口付けを施す。
エドワードが反応しないなど、とんでもない。
ロイは幾度も味わった身体で、それを知っている。
だから、強引に進めるのだ。覚えている体の記憶を揺り覚ますように。
最初は驚きで抵抗していた身体も、口付けの熱が上がれば上がるほど大人しくなってくる。
歯列を割っていた舌を侵入させる為に、頤を掴んで口を開けさせると、
何度も味わってきた口腔内を蹂躙始める。

ーーー 覚えているものなんだな ---
感慨深く口付けを交じ合わせていく。
たどたどしいながらも、エドワードは少しずつ少しずつ応えようとしている。
多分意識しての事ではなく、体が快感を追う反応なのだろう。
「ん・・・ぁ んぅ・・・」
吐息のように漏らされる鼻声も、甘く掠れていることに彼は気づいているのだろうか。
エドワードは覚えの良い生徒だった。
数度、身体を繋いだ時に学んだ事を、着実に身につけていっている。
力の抜けてきた身体を、ソファーに横たえさせ、糸を引いたまま唇を離すと、
仰け反る首筋に埋めていく。
開放された口で、はぁはぁと熱い呼吸を吐き出している。
抗おうと伸ばされた腕を難なく組み伏せ絡め取れたのは、
深酒の後遺症だろう。
今夜は今までのように薬は使ってはいないが、代わりに多量のアルコールが
エドワードの身体の熱を上げるのに役立っているようだった。
「やっ・・・やめ・ろ。 中・・将、やめ・・」
切れ端になっている理性が、エドワードの留め金になっているのか。
ロイは、そんな小さな欠片を砕こうと、エドワードの喜ぶポイントの
1つの実に齧りついて、締め上げてやる。
「あああああっーーー!」
長くたなびく嬌声を上げながら、エドワードの体が喜びに跳ねる魚のようにしなる。
ロイは嬉しさを隠そうともせず、その感情でエドワードを染め上げるように
次々と快感のツボを押していく。
どこに触れても、嘗め上げても、エドワードの口からは喜びの声が溢れてくる。
ーーー そうだ、もっと乱れろ。そして、思い知れ。
 私の手で、歓喜の雫をほとぼらせる、貪欲な自分を。
 思い出すんだ、エドワード ---

張り詰めきったエドワードのモノを、ロイは大切に手の平に掬い上げる。
そして、ゆっくりとそれに口付けをして、喉の奥深くに収めこんでしまう。
今までと段違いのダイレクトな快感に、声無き叫びをエドワードの口が象る。
吸い付いて、締め付けてやる度に、張り詰めているモノが
ポタポタと泣いて震えを大きくする。
そして・・・。
幹をきつく扱きながら、大きな音を響かせて吸い上げてやると。
「ロ、ロイィーーーー!!」
彼の名を叫びながら、果てるエドワードがいた。
身の内が震える程の喜びを感じながら、ロイは1滴も残す事無く
全ての迸りを自分の中に取り込んでいく。

はぁはぁはぁと荒い息を吐き、白い胸を上下させているエドワードを
ロイは満足げに眺め、その腕の中に抱き込む。
「エドワード、判っただろ?
 君はちゃんと感じている、私の腕の中でね。
 もう思い悩む必要は無い、これからも私の腕の中でだけ
 感じてくれればいい。幾らでも。

 ずっと君を愛していた。
 欲しかったんだ・・・君を」
そう告白をしながら、今だ意識の定まらないエドワードに
情熱のありったけを込めた口付けを仕掛ける。
そうしながらも、下肢に伸ばした手は愛撫を緩めない。
後ろに回った手は、ゆっくりと自分が納まる場所を解している。
違和感にぐずるエドワードを宥めながら、潜り込ませている指を
1本、また1本と増やして蠢かす。
そうやって、抗議の声が甘く濡れ始める頃を見計らって、
ロイは慎重にエドワードの中へと突き進んで行った。
まだ回数が少ない彼のそこは、侵入するモノを簡単には受け入れはしないが、
互いの体温が馴染む頃には、今度は離さないとばかりに喰いついてくるのだ。
痛みに上げている声も、ロイの喜びに水は差さない。
どころか、漸く手にした実感を、まざまざとロイに感じさせては煽るだけだ。
ロイの大きさに馴染んできた頃、待っていたようにロイが腰を動かし始める。
最初はゆっくりと引いて、強く捻じ込むように押し込んでいく。
その際に、エドワードが最も喜びを露にする箇所に当ててやると。
「あああーーー!!」
頭を打ち振って、雄叫びを上げてくる。
何度も、何度も首を振るから、髪が頬にも肩にもパラパラと散って、
白いシーツの中、美しい模様を書き続けている。
そして、強すぎる快感に耐えようと固く引き絞られたシーツが波打っている。
ロイは、その手を取って、自分に回してやる。
彼は・・・エドワードはもう、他のものにしがみ付く必要などないのだ。
彼の身体を支配する、ロイにだけその腕を伸ばせば良い。
きつくしがみ付いてくる身体を、ロイはあらん限りの力で抱き止めてやる。

ーーー もうどこにも、誰にも渡さない・・・。
 君は未来永劫、私だけのものだ ---

激しく打ち付けられる腰に、上も下も涙を零しながら答えるエドワードの身体は、
確かに、もうロイからは離れられないだろう・・・。




白々と部屋が朝日に染め上げられていく中、ロイは腕の中で
安心しきって眠っているエドワードを見続けていた。
長く繰り広げられた2人だけの饗宴は、今まで抱いた日々の中で
1番の充足をロイに与えた。
そして・・・。
こうして目覚めるのを恐れる必要も、もう・・・しなくて良いのだ。
攻め立てながら、ロイは何度も何度もエドワードに誓わせた。
『自分の、ロイのものだけでいるように』と。
エドワードは解放を強請って泣きながら、何度も頷き、誓った。
『ロイだけのものでいる』と。


いつか・・・頭の良い彼の事だから、ロイが仕掛けた罠に気づく時が来るだろう。
だが、そうなったとしても、その頃には彼は自分から離れなくなっていることだろう。
だから、良いのだ。
どれだけ卑怯で、非道であっても。
彼を手に出来ない明日になぞ、興味は無い。
彼が、エドワードが手の中にいてくれるからこそ、ロイは明日を生きようと思えるのだ。

そんな事を考えて、エドワードの寝顔を見つめていると、
小さく瞼が動き始める。
昨夜は・・・と言っても、数時間前まで続いたから、先ほどまで、
かなり無理をさせ続けたから、今日は動くことは無理だろう。
その間に、引越しの業者に荷物を運び込ませてしまうか・・・。
その自分の考えに、満足そうに頷いていると、小さくピク付いていた瞼が
薄っすらと開かれていく。
陽の光を弾きながら、羽根の様に震える睫に見惚れながら、
ロイは額に優しくキスを落とす。
「おはよう。目が覚めたかい?」
そう訊ねた声は、蜜を溶け込ませたように甘ったるく流れただろう。
その声に一挙に覚醒したのか、シーツの中で固まってしまっている。
「今日は休みを申請した有る。君は無理せず、ゆっくりと休んでなさい。
 私は・・・残念だが、休むわけにはいかなかったんでね」
それだけ告げると、まだ固まったままのエドワードの身体を軽く抱きしめ、
触れるだけの口付けをすると、残念そうな表情で起き上がっていく。

『信じられない・・・』
エドワードの心中の言葉は、そればかりがグルグルと回っている。
『ろ・・ロイと俺が・・・、あ、あんな事を!』
ところどころ記憶が抜けている箇所も有るが、当然、全てを忘れているほど
都合よくもない。
思い出すシーンの数々に、のたうつようにしてシーツの中を転げまわる。
と言っても、体の節々が悲鳴を上げているから、せいぜい身じろいでいる位なのだが。
羞恥で早くなる呼吸を落ち着かせようと、エドワードはシーツに潜り込んだまま
何度も深呼吸をする。
そして自分を省みながら、導き出した答えは・・・。
『よかった』という正直な感想だった。
確かに身体は痛いし、だるくて仕方がないが、それ以上に身体を、
・・・いや精神的にも満たしているのは、満足感の方が数十倍強かった。
そんな自分が信じられない気持ちもあるが、
そう感じている自分を誤魔化そうとは思わない。

「エドワード?」
潜り込んだままの様子を訝って、ロイが呼びかけてくる。
「な・・・なに?」
とても顔をつき合わせる心境には至らず、潜り込んだまま返事をする。
「哀しくなるから、顔くらいは見せてくれないか?」
そう告げる声が、本当に悲しそうだったから、エドワードは渋々、
シーツから少しだけ顔を覗かせる。
と、目の前直ぐにロイの顔があって、一挙に動揺が大きくなる。
「じゃあ、なるべく早く帰っては来るつもりだが、
 無理せずゆっくりと過ごしなさい」
その優しい言葉が、余りにも自然に掛けられたから、
エドワードも素直な気持ちで頷き返した。
「・・・うん」
エドワードの返事に満足したのか、ロイは微笑を深くして
シーツ越しに、エドワードの唇にキスを落とす。
「・・・・・!!」
悲鳴を上げそうになったのをぐっと堪えて、エドワードは真っ赤な顔のまま
ロイを見上げている。
「エドワード。誓った言葉を忘れてはいないね?
 君はここで待っていてくれ。私が戻ってくるのを」
そう告げて、優しく髪を梳くロイに、エドワードは逡巡も僅かに
コクリと頷いて返した。
そのエドワードの返答に返したロイの表情は、エドワードが今まで見た中で
1番くらいの嬉しそうな笑顔だった。



迎えに来たハボックに運転して貰いながら、司令部へと向かう。
「中将、昨日はご馳走様でした。
 んで、大将・・・エドの奴、大丈夫でしたか?」
車中に入ると、気がかりだったのだろう、真っ先に聞いてくる。
「ああ・・・、色々とあったらしい。
 皆にもその内打ち明けるだろうが、慌てずに受け止めてやってくれ」
「そうなんですか・・・やっぱり。
 大丈夫っす!俺らは、あいつの事を判ってますから」
それに頷き返して、思い出したようにロイがハボックに話しかける。
「それと、引越し業者を手配して、エドワードの部屋を私の所へ
 移してもらってくれ」
「へっ? 中将の所へですか?」
怪訝そうに聞き返すハボックに、そうだと返事をする。
「住む処が無くなったそうでね。
 取りあえずの対応で、私のところの空いている部屋を貸すことにしたよ」
「住む処が・・・」
それで何かを察したのか、ハボックは訊ねてくる事もなく、頷きを返すだけに留め、
車の運転に集中し始める。

ロイは車内から広がる朝の見慣れた光景を、眩しい思いで見つめる。
いつもと同じの毎日が、これほど喜びに満ちていると感じられるのは
自分が幸せだからだろう。
不幸な時には、どうしても心が曇り、視界も塞がれやすい。
人の幸せを願う前に、まずは自分の幸せを掴むべきなんだなと
幸せを噛み締めながら実感した。


辛く、哀しみに浸り込んでいた時は過ぎ去った。
これからは、幸せを掴み続けていく為に頑張れば良いのだ。
欠けていたピースを1つはめ込んだだけで、ロイの世界は
完全なものとなった。
なら、失ってならないものは、そのたった1つのピースだけだ。
エドワードという・・・。


心地よい疲労感に委ねながら、今日一日の時が早く過ぎ去る事を願う。
愛しい人が待つ場所へと、早く帰りつく為に・・・。


                          end


〔 後書き 〕
う~ん、なんかこのカップルの方が幸せそうなラストの気が・・・。
BAD ENDのつもりでしたが、それも見解を変えれば
そうでもないんですね~。
まぁ、2人が・・・特にエドワードが幸せを感じてくれるなら
私にすれば、どちらでもOKなんですがね。v(^o^)
 


  ↓面白かったら、ポチッとな。
拍手



© Rakuten Group, Inc.